多くの歯を残し一生自分の歯で美味しく食事をするためには、口の中の健康を維持する口腔ケアが必要です。これについて、2014/1/19 の読売新聞に日本対がん協会会長の垣添忠生先生の記事がありました。この中で口から食事を摂ることができなかった入院患者が、リハビリ中に口腔ケアを行い義歯を装着し回復していく様子が紹介されていました。入院中の口腔ケア、自分で食事を食べることの大切さを示す実例だったので、ご紹介します。
よくかんで食べることは、人間の幸福や尊厳にもつながる。そのことを、先日、日本顎咬合学会の事務所で見せてもらったビデオで知った。その内容は実に衝撃的だった。肺炎で入院した69歳の女性は、口からの栄養摂取は無理と診断され、体に何本も管が入り、寝たきりで表情も失われていた。だが、転院を契機に、女性にリハビリが始まり、口腔ケアも実施、義歯を装着した。すると、軟らかいものから少しずつ、食事がとれるようになった。食事の量が増えるにつれてIVH(中心静脈栄養)などの管が順次はずされ、女性はベッドに座って食事するようになる。さらに、車イス移動、廊下の手すりの伝い歩き、つえ歩行と続き、2か月後には退院した。そして、半年後には海外旅行に出かけた。旅行出発時の女性の表情は輝いていて姿勢も良く、入院していたときの寝たきり女性とは別人かと思うほどの回復ぶりだった。口から食事をとることによって、筋力が回復し、身体のバランスも良くなり、意欲も出てきたからこそ、海外にまで出かけることができたのである。ビデオの女性とは逆に、患者のかむ力が低下していった場合はどうなるか。胃ろうや、鼻や口からチューブを胃に入れて栄養を補給する経管栄養、IVHといった手段に頼って口からの食事をしないと、顎やのどの筋肉、呼吸をつかさどる筋肉が衰える。そうすると、話すことも不自由になり、閉じこもってしまう。しかも、細菌が唾液などとともに肺に流れ込むことで起きる誤嚥性の肺炎をひき起こしやすくなる。誤嚥を起こす高齢者の8割は、口腔機能の衰えが原因とする研究もある。
カテゴリー:★【予防歯科・定期検診】 日時:2014年3月19日