先日、東京医科歯科大学歯学部附属病院の放射線科の先生とお話しをする機会があり、その際に同科のパノラマエックス線撮影では防護エプロンは着用していないとのことをうかがいました。その根拠となる指針を日本歯科放射線学会防護委員会が2015年9月に発表しています。
【それぞれの撮影法における防護エプロンの使用】1.口内法エックス線撮影
口内法撮影では、フィルム(CCD、IP等)を使用して標準的な全顎撮影を行う場合、前歯・犬歯・小臼歯・大臼歯を10~14の部位に分けて撮影する。撮影時の臓器線量は撮影部位とエックス線の照射方向(ビームの向き)によってかなり異なる。したがって、照射野が十分に限定されているとはいえ、撮影手技によっては防護エプロンを使用する意義はあると考えられる。しかし、EC(European Commission、欧州委員会)のガイドラインでは、必ず使用しなくてはならないとはされていない。防護エプロンの装着は、患者の被ばく線量を低減するためというより、患者の心理面への配慮のためと考えた方が適切である。2.パノラマエックス線撮影
パノラマエックス線撮影法は、上向き5~10度のスリット状のエックス線を患者の頭部後方から入射させ、270度程回転させて歯顎顔面部を走査し、その展開像(総覧像、パノラマ像)を得る方法である。防護エプロンを使用しても、実質的な患者の線量低減効果はほとんどないとされている。一方、防護エプロンを不適切に装着した場合、防護エプロンの像が下顎前歯部に重複し、再撮影を余儀なくされる危険性がある。このため、防護エプロンは使用しない方が良いと考えられている。しかし、患者の心理面への配慮に基づいて装着する場合もある。
カテゴリー:★【歯の知恵袋】 日時:2016年2月29日