毎月第一水曜日(時々変更があります)はスタディーグループ救歯会の例会に参加しております。月1回、分野を限らず包括的な歯科医療の症例検討会をしています。当日の診療は4:30までとなりますので、患者様にはご迷惑をおかけいたします。
2013 / 12 / 4 は以下のテーマで3人の演者が発表しました。
1) 論文を自分なりに考える。
2) 既存の顎位にこだわった一症例
3) 上顎遊離端欠損にコーヌス・クローネを用いた1症例
1) 論文を自分なりに考える。は、渋谷区でご開業の西堀先生の発表でした。通常、救歯会の発表は発表者が自身の症例を紹介し、治療計画や実際の治療について会員が討論するという形式ですが、今回は「研究論文の捉え方についての提案」といういつもとは違ったスタイルのものでした。3つの論文を例に挙げ、文献を引用する際にはバイアス(偏見、先入観 )を考慮し、自身に都合の良いように拡大解釈しないようにしましょうという主旨の発表でした。
文献の一例として「8020達成者の歯列、咬合の観察 -東京都 文京区歯科医師会の資料から−」(茂木悦子ら 1999)が挙げられました。この研究で著者らはかみ合わせのタイプと歯の生存に関係があるかを調べています。日本歯科医師会では80歳まで20本の歯を残そうという、8020運動を推進しています。研究では約7000名の高齢者にアンケートを郵送し、回答のあった3002名のうち8020を達成した51人を対象にかみ合わせを調査しました。その結果、8020達成者に反対咬合(受け口)がみられなかったことから、正常なかみ合わせは多数歯維持のための一つの条件となりうると報告しています。
茂木悦子ら (1999)より
「51人の8020達成者の内、反対咬合(受け口)の人は0だった。」→「多数歯維持には正常なかみ合わせが重要」というのは一見正しく思われます。ところが、この研究では7000人にアンケートを送り回答のあった3002人だけを調査対象にしています。回答の無かった約4000人はあまり他人に自分の口のことを知らせたく無い人で、その中に反対咬合の人が多く含まれていた可能性は無いか?など、結論を出す前に統計的な偏りを精査して排除する必要があるとのことでした。
今回の発表は症例ではなく「研究論文の捉え方についての提案」でしたが、自身に都合の良いように文献を拡大解釈しないよう論文をよく精査するという姿勢は、今後の症例発表の際にも気をつけるべき点であると感じました。
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カテゴリー:★【学会・スタディーグループ】, ・救歯会 日時:2013年12月6日