歯周病の原因
歯周病の原因について説明します。原因を知ることは治療をする上で必要です。
歯周病の原因はプラーク
歯周病の原因はプラーク(歯垢)です。プラークとは歯に付着している粘着性の沈着物で、非常に多くの細菌とその産生物から構成されています。 また、喫煙や糖尿病などの要因(リスクファクター)も歯周病の進行に影響をあたえます。
宿主自身が歯周組織を破壊する!?
歯周病の進行の過程において、実は細菌の刺激により宿主(歯周病患者)自身が歯周組織を破壊します。
歯周病菌の刺激により、宿主の免疫細胞はサイトカインと呼ばれる情報伝達物質を産生します。このサイトカインが歯肉組織や骨組織を破壊する酵素の分泌を促し、歯周病が進行していきます。「歯周病」は細菌に汚染された歯を体から追い出す宿主の防御反応の過程なのです。
逆に、細菌に汚染された歯を清潔にすることで歯周病を予防したり、進行を止めることができます。
歯周病により抜歯された歯
表面には根の先まで大量のプラークが付着している
歯周病のリスクファクター
歯周病の原因はプラーク(歯垢)ですが、以下の要因(リスクファクター)も歯周病の進行に影響をあたえます。
喫煙
タバコは、がん、呼吸器、心臓などのさまざまな病気と関連していますが、歯周病との関連についても以下のことがわかっています。
タバコを吸う人は吸わない人に比べて 2.5倍~ 6.0倍 歯周病にかかりやすくなる(アメリカ歯周病学会 position paper, 2005 )
タバコを吸う人は吸わない人に比べて 歯周病治療後の治癒が遅い( Grossi ら 1997, Kinane ら 1997 )
難治性歯周病患者の 90%は喫煙者 である( Johnson , Slach, 2001 )
糖尿病
糖尿病が歯周病を悪化させるとともに、歯周病も糖尿病を悪化させるという、相互の影響が指摘されています。歯周病の治療をすることで糖尿病患者における血糖コントロールが改善されたという報告もされています。
Taylor (2001) は 医学文献のデータベース( MEDLINE )から1960年以降の研究を分析し、以下の結果を得ました。
- ほとんどの研究において、健康な人に比べ糖尿病患者では歯周病患者の割合がより高く、歯周病がより進行していた。
- 歯周病による感染は、血糖値のコントロールにマイナスの影響を与えていた。
- 2つの経過観察研究では、重症の歯周病と血糖値のコントロールの双方向の関連性が示された。
このように、糖尿病の患者さんは歯周病になりやすく、口腔内を衛生的にすることにより血糖値をコントロールしやすくなる可能性があるようです。
その他のリスクファクター
歯周病の進行に影響をあたえるリスクファクターには、その他に以下のようなものがあることがわかっています。
遺伝的性質
- 社会心理的ストレス
- エイズなどの全身疾患 (アメリカ歯周病学会 position paper, 2005 )
健康な歯周組織
健康な歯ぐきは、うすいピンク色で歯間部では三角形をしています。
歯は歯肉とその下にある骨によって支えられています。健康な状態では、歯肉は歯にしっかりと付着して、歯と歯肉の境目の溝(歯肉溝)は浅い状態です。
健康な歯ぐき①
歯肉には炎症を起こしたような赤みはなく、うすいピンク色をしています。また歯と歯の間の歯肉には腫れがなく、三角形になっています。これは、よく歯みがきが出来ていて、プラークがないためです。
健康な歯ぐき②
この写真では、歯肉がやや黒く不健康に見えるかもしれません。実はこの写真も健康な歯ぐきの例です。
歯肉には皮膚と同じようにメラニン色素が存在します。メラニン色素の多い・少ないにより色白・色黒の人がいますが、歯肉のメラニン色素の量にも個人差があります。この写真の方の歯ぐきも、みがき残し、赤み、腫れのない健康な歯ぐきなのです。